東京大学 水族生理学研究室
研究内容Research

回遊を制御する生理メカニズムの解明

04回遊を制御する生理メカニズムの解明

担当:井ノ口

スズキは海で孵化したあと、汽水域および河川へ侵入することが知られています。スズキがなぜ海水から淡水に回遊するのかを調べるため、海水から淡水への移行実験を行い塩類細胞を観察しました。すると、イオンを排出していた海水型塩類細胞は、イオン輸送体の発現パターンを切り替えながら鰓での細胞分布を広げることで、イオンを取り込む淡水型へと変化することが示されました。それまで淡水と海水で塩類細胞の分布が変わることは知られていましたが、ひとつの細胞で分布変化と機能変化が同時に起こるということが新たに示されました。

スズキの塩類細胞。海水では1種類の塩類細胞がイオンを排出し、淡水では2種類の塩類細胞がイオンを取り込んでいる。
鰓での塩類細胞の分布。NHE3細胞(緑)は2次鰓弁にNCC2細胞(青)は1次鰓弁に分布している。

最近では、これまでに得られた淡水・海水適応の知見をもとに、サケマス類を淡水や海水で効率的に生育する養殖技術の開発にも携わっています。

主な業績

  • Inokuchi et al. 2017 J Exp Biol