03淡水環境・海水環境への適応メカニズムの解明
担当:井ノ口
魚の中には、キンギョのように淡水でしか生きられない種やタイのように海水でしか生きられない種が存在し、これらは狭塩性魚と呼ばれています。一方、サケやウナギなどは生涯のうちに川や海を行き来し、淡水と海水の両方の環境に適応できることが知られています。このような魚は広塩性魚と呼ばれています。体液の水分と塩類を調節するための器官として、魚では鰓(エラ)・腎臓・腸が知られていますが、鰓に存在する塩類細胞がイオン調節の中核を担っています。
モザンビークティラピアという魚は高い塩分耐性をもち、脱イオン水から二倍濃縮海水という広範囲な塩分環境で生存可能です。当研究室では、このティラピアを実験魚とし、魚の淡水環境・海水環境への適応メカニズムの研究を進めてきました。様々な塩分環境で飼育したティラピアの塩類細胞を観察したところ、淡水中ではイオンを取り込むため塩類細胞が表面積を広げる様子が観察されました。また、周りの塩分濃度が変化すると、塩類細胞はプロラクチンというホルモンの制御を受けるとともに、自律的に濃度変化を感知することでイオン輸送機能を最適化していることが分かりました。ティラピアの塩分耐性が年齢によって変化することも示されています。2才という高齢のティラピアと比較すると、生後4ヶ月の若いティラピアの塩類細胞はホルモンへの応答性が高く、淡水から海水に移した場合の生残率は年齢とともに低下することが明らかになりました。
主な業績
- Inokuchi et al. 2021 Front Aging
- Inokuchi et al. 2015 Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol
- Inokuchi et al. 2008 Comp Biochem Physiol A Mol Integr Physiol